尋常性乾癬
乾癬とは
監修：東京慈恵医会医科大学 皮膚科学 照井正先生
東京慈恵医会医科大学 皮膚科学 名誉教授 中川秀己先生
「乾癬」とは、遺伝的素因と環境因子によって免疫系が活性化され、表皮が過剰に増殖することによって引き起こされる慢性的の炎症性の皮膚病です。「皮膚の炎症」と、「表皮の新陳代謝の異常」によってさまざまな症状が出てきます。
乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まって活性化しているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。また、表皮が健康な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、生産が過剰な状態となっています。過剰に生産された表皮は厚く積み上がり、カサカサの皮めくれになって剥がれ落ちていきます。現在、日本には約40～50万人の乾癬の患者さんがいますが、食生活の欧米化などにより増加の傾向にあります。約2：1の割合で男性に多いとされています。
他人にはうつらない病気です
乾癬は、人から人へうつることは絶対にありません。 温泉やプールに入ったり、美容院や理容店で洗髪や散髪したりしても移る心配はありません。
乾癬の種類
尋常性乾癬
監修：東京慈恵医会医科大学 皮膚科学 名誉教授 中川秀己先生
乾癬の患者さんの大半（約90％）を占めます。 頭部、肘・ひざなどこすれやすい部分や刺激の多い部分によく見られ、爪にも症状がみられることがあります。
滴状乾癬
小型の皮疹が全身に出現します。扁桃腺炎などがきっかけになって起こることが多いといわれています。
関節症性乾癬（乾癬性関節炎）
皮膚の症状に加え、関節の腫れ・痛みがある乾癬です。時に強い変形をきたすこともあります。
乾癬性紅皮症
皮疹が全身に広がり、皮膚の大部分が赤くなった状態になります。
膿疱性乾癬
発熱やだるさを伴い。急激に全身の皮膚が赤くなり、その上に膿が多発します。放置すると重篤な症状になることがあります。
乾癬の原因
まだ完全に解明されたわけではありませんが、もともとの体質（遺伝的素因）と、ストレス・感染症などの外的因子、肥満・糖尿病などの内的因子が影響すると考えられています。
最近の研究では、細菌やウイルスなどの異物から身体を守る「免疫システム」が過剰に働くことで乾癬が発症・悪化することがわかってきました。乾癬の皮疹部ではTNF-α、インターロイキン23・12・17などの免疫や炎症に関与するサイトカインが複雑に関与していることがわかってきています。
尋常性乾癬の治療方法
外用療法 光線療法 内服療法 生物学的製剤 など
外用療法
炎症を抑えるステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬およびこれらの配合外用薬が用いられます。それぞれの薬によって特性が異なり、軟膏・ローション・ゲル・スプレー・シャンプーなど様々なタイプがあります。
光線療法
患部に紫外線を照射することにより、身体の過剰な免疫反応を抑える治療法です。当院ではUVBの中でも治療効果が高く、狭い領域の波長を照射するナローバンドUVB療法を行っています。他に、光に対する感受性を高める薬を外用あるいは内服してUVAを照射するPUVA療法などもあります。
内服療法
皮膚の細胞が過剰に作られるのを抑制するビタミンA誘導体、乾癬で活発になっている免疫反応を抑制する免疫抑制薬、感染における過剰な炎症を抑えるPDE阻害薬などが用いられます。
生物学的製剤
外用薬や内服薬で十分な効果が見られない場合に選択されます。乾癬の炎症に関わるサイトカインの働きを抑える製剤を注射もしくは点滴で投与します。様々な治療方法の中でも、皮膚症状を改善する効果が高いと言われています。副作用があることもあり、、主治医ときちんと話し合ったうえで実施します。
乾癬とうまく付き合うために日常生活で気を付けたいこと
- 皮膚への刺激をできるだけ避けましょう・・・こすれる服、皮膚を搔くなどで「ケブネル現象」がおこり、皮疹が悪化する可能性があります）
- 乾燥に注意しましょう
- 日光浴をしましょう・・・適度な日光浴がよく、急激な日焼けや発汗は避けましょう
- 感染症に注意しましょう・・・風邪・扁桃腺炎などで悪化することもあります。
- ストレスをためないようにしましょう
- 適度な運動をこころがけましょう
- 食生活に気を付けましょう・・・高カロリー食に注意して、肉より魚を。かゆみが増す可能性があるので刺激物、飲酒はほどほどに。
- 喫煙は控えましょう
- 入浴により清潔を保ちましょう・・・こすらず洗いましょう。